息子よ、すまない。


 こんな事書くのは、気が引けるのだけれど、自戒の念をこめて、これからずっと心にとめて気をつけるように、そして、もし息子がこれを見ることがあったなら、謝罪の気持ちとして。
 今日は、代休だった。お昼から、家族三人で職場の職員による作品展を見る予定だった。息子の写真も出品したので。
 午前中は、部屋の片付けをした。いつも服が散らかっているので、しまう場所を作ろうといらない物を整理しはじめたら、引っ越したときのままの衣装ケースがあった。開けるとなにやら小物が適当に詰めてあったので、捨てる物と使える物に分別した。その中にサプリメントや、薬があった。息子は、なにやらその辺の物をいじくり回して遊んでいる。キャベジンの瓶を振ってふたを開けろと催促するが、当然開けない。錠剤のシートを手にしていたので取り上げて、ゴミ袋に。そのうち鉄剤のサプリのふたを開けてぶちまける。でも拾ってまた容器に戻している。見ていたところ、口に入れてる様子もないので、放っておいた。こういう無神経がいけなかった。
 12時にお昼が出来たと、妻の声。そばが三人分。これを食べて職場に作品展を見に行こうと、息子を呼んだ。全然来ないので、見に行くと、まだ座り込んで鉄剤を散らかしている。早くおいでと声をかける。が、息子は立ち上がれず、よろけてこける。再度立ち上がろうとしてこける。それに手つきが変だし、目つきも変だ。
 さーっと血の気が引いた。さっき取り上げた錠剤のシートは、昔飲んでいた睡眠薬。これを舐めたか、飲んだに違いない。すぐ息子を連れてくる。やはり立ち上がれずゴロゴロもがいている。とりあえず妻に牛乳を飲ませてもらう。近所の小児科に電話すると、大きな病院の小児科に行ってくれと言う。妻が抱いて私の車の助手席に乗り、病院へ向かう。車の中で病院に電話してもらう。何度かやりとりして、結局手の空いている小児科医がいないので、近所の小児科に行ってくれと言われる。しかし、そこは断られている。
 別の病院に連れて行く。1時、そこで先生を手配してもらい診てもらえた。待っている間、息子はぐったりしている。目はうつろで今にも寝そうだ。このまま寝かすと、目を覚まさないような気がしてならない。
 当然のごとく胃洗浄。そして活性炭を飲ませた。待合室で息子の苦しそうな声を聞く。しかしそれも聞こえなくなる。不安になる。ちゃんと挿管されているのか、気管に入ってないか、意識を失ってないか。長い時間が経った気がした後呼ばれる。あんなに苦しそうだったのに寝ている。やっぱり薬が効いているのだろう。髪の毛はびっしょりで、床には活性炭液や生食などがたれている。紫色の物が出てきたが、何か食べた可能性があるかと聞かれるが、鉄剤しか思い当たらない。しかしあれは黒だ。睡眠薬は白だ。紫色は思いつかない。朝飯は海苔むすびだが、海苔ではないという。錠剤は出てこなかったようだ。舐めただけかもしれない。(あるいは溶けた)
 様子を見るから一晩入院させると言われる。妻が手続きに行ってる間に息子が目を覚ます。試しに立たせようとするが、やはり立てない。目の焦点も合っていない。病名(?)は薬物誤飲の疑い。薬は結構強い睡眠薬で、半減期が大人で7時間くらい。私が飲んだときは、翌日起きるのがとても辛かった。夜中にトイレに目が覚めたときなどは、ふらふらしながらトイレに行き、そして出たところで寝てしまった。そんな薬である。そんな物をとっておいたのがそもそも間違いだった。
 2時過ぎ病室に行き、血中酸素濃度(Spo2)のセンサをつけられる。これが結構イヤみたいで、取ろうとするが、ダメとしかる。お腹がすいているので、すこぶる機嫌が悪い。1時間ごとの血圧測定でも大暴れ。なだめながら何度も測定し直し。麦茶をあげると飲む方に注意が行き、やっと測定完了。採血の後におやつを食べていいと言われ、コンビニへヨーグルトを買いに行く。帰ってくると息子の泣き叫ぶ声が階段まで聞こえる。声のする方へ行くと、採血室で3人がかりで押さえつけられていた。しかも男の人が馬乗り。私が見るとさっとカーテンを閉められた。今まで注射で泣いたことは一度もなかったが、親から放され、しかも空腹で相当ご機嫌斜めだったようだ。私が抱っこしてあげていたかった。といっても歯磨きの時も馬乗りで押さえつけているが。
 病室へ帰ってきても機嫌が悪かった。が、ヨーグルトをあげるととたんに大人しくなる。しかし、ふたに取り分けたのが終わると、もっとよこせと大騒ぎ。テレビをつけて何とかごまかす。洗濯物をしまい、おむつを取って妻の車に乗り換えるために一旦家に帰る。病室を出ると息子が泣き出す。病室は4階だが、階段で下りていったら2階まで泣き声が聞こえた。
 家に帰ると、お昼のまま、冷えて、少し乾いたそばがテーブルの上に並んでいる。ふたをして冷蔵庫にしまう。夜は、これを一人寂しく食べることになる。洗濯物をしまう。小さい服がとても可愛く見える。紫色の物を探したがそんな色のサプリはない。辺りにあったサプリをすべてゴミ袋に捨てる。
 病院へ戻って妻と交代。妻はお泊まりセットを家へ取りに帰る。私はベッドの上で息子を膝の上に乗せ、テレビを見る。普段見せないのだが、どうにも退屈で仕方ない。でも、降りて歩こうとはしない。それで、ピタゴラスイッチや、おじゃる丸を見る。初めておじゃる丸を見たが、面白かった。私が笑ってしまった。
 6時頃、夕食が来る。白身魚の煮付けにサツマイモの煮物、ちくわの和え物と白米、番茶。魚好きの息子は、真っ先に魚を平らげる。焼き芋は大好きなのに、煮物は味付けのせいかいまいち食べが悪い。少しずつ食べさせる。ちくわはすぐに吐き出してしまった。妻が戻ってきた。白米を魚の煮汁につけてあげるとよく食べて、ちくわ以外完食。そのうち、番茶を使って水遊びをはじめる。妻が食器を片付けると泣き叫んで大暴れ。薬のせいか、場所のせいかどうも興奮状態である。テレビで何とかごまかす。
 8時頃、おむつを替えると、またもや大暴れ。しかも全然泣きやまない。ベッドから降りようとするので、降ろしてやると、やっぱり歩けず、2回もこけて余計に泣き叫ぶ。なんとしても泣きやまない。最後の望みをかけて、家から持ってきたお昼のお焼きをあげてみると、なんと全部食べて、大人しくなる。病院食じゃ足りないのか!その後電気を暗くして、一つのベッドの上で親子三人ゴロゴロ。何か少し落ち着く。
 9時過ぎ、私が帰り支度をする。また息子が騒ぐんじゃないかとベッドの柵の外からしばらく顔を見ている。息子は妻の膝の上で、甘えたり、かじったり(?!)。笑顔の戻った息子の顔に胸が詰まる。この笑顔が無くなったら、どうしようなんて考えもしたが、また笑顔に会えた。今は、この笑顔が人生の原動力だ。
 さて、落ち着いたので試しにバイバイすると、息子もバイバイ。これなら大丈夫と、病室を出る。後ろ髪を引かれる。いっそ泊まっていった方が気が楽な気もするが、場所もないし、翌日は仕事だ。車1台で来ているから、退院時は休みをもらって迎えに行かなくてはならない。が、それまで落ち着かない。家に帰って先ほどのそばを食べ、これを書き始める。不安を紛らわしているのかもしれない。明日、元気に飛び跳ねる息子に会えるのを楽しみにしよう。
 とんだ一日になってしまったが、すべて私の不注意のせいであり、認識の甘さであった。もし、こんなのをここまで読んでくれた奇特な方がいましたら、感謝するとともに誓います。同じ過ちは二度と犯さないと。
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by genjirou0 | 2006-03-06 23:27 | 出来事
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